【仕事人】定期就航を影で支える「グランドハンドリング」の矜持

オホーツク紋別空港×ANA×グランドハンドリング

北海道の北東に位置するオホーツク紋別空港。流氷が訪れるこの寒い季節、1日1往復の運航を支えるグランドハンドリング担当がいる。
身を切るような風雪の中、冬の空港で働くことのつらさや定期就航便の存在意義、そして紋別への思いを聞いた。

<オホーツク紋別空港>
海岸沿いに位置する、流氷を見られる空港

日本唯一の氷海域である北海道・オホーツク海の南東、市内バスターミナルから約7キロの位置するオホーツク紋別空港。平成11年11月11日に開港。北海道と紋別市が「開港時の思いを忘れないように!」と、覚えやすい日にちに設定したという。オホーツク紋別空港周辺の市町村で空港利用助成制度を実施したことも手伝って、ここ数年の乗降客数は、4万9623人(平成23年)、5万1269人(平成24年)、5万7859人(平成25年)と右肩上がりで増加中だ。最近は乗継割引もあり、大阪や九州からのお客さんも増えてきたという。市内までのアクセスはよく、空港から市内からまでは15分ほど。ターミナルビル発着の空港バスが無料で運行されているのはうれしいサービス。232台収容できる無料駐車場も完備する。

運用時間:9:00〜17:00
滑走路:2000×45m
方位:14/32
ICAO/IATAコード:RJEB/MBE

種別は地方管理空港で、設置管理者は北海道。開港当時は新紋別空港だったが、その翌年に付けられた“オホーツク紋別空港”の名で現在は親しまれている

PBB(パッセンジャーボーディングブリッジ=搭乗橋)はなく、ターミナルビルへはタラップを降りて歩いて向かう。オホーツクは「OKHOTSK」と表記される

コンパクトな2階建てのターミナルビル。天井は全面ガラス張りで採光性がよく、明るく清潔だ。喫茶店(10:00〜14:00)と土産店(11:00〜15:00)を併設

紋別観光協会のキャラクター紋太くんの書割看板(顔ハメパネル)とヒグマの剥製が出迎えてくれる。表には、流氷に乗ってやってくる「クリオネ」のオブジェも設置

<就航便>
1日1往復、東京・羽田ーオホーツク紋別間を結ぶANAの翼

現在、オホーツク紋別空港に就航しているのはANAのみ。東京・羽田への直行便が1日1往復運航、約1時間50分で結んでいる。確定している2015年3月28日までのタイムスケジュールは、375便【東京・羽田 10:30発】ー【オホーツク紋別 12:20着】、376便【オホーツク紋別 13:00発】ー【東京・羽田 14:55着】。使用機材は「ボーイング737」で、往復ともにプレミアムクラスが設定されている。


運用されている機材は、乗客数167席のボーイング737-800。シーズンに入ると満席になることも多い。滑走路上の機体は、300㎜程度の望遠レンズがあれば展望デッキから撮影できる


自走式オープンエプロンで、機体はエプロン上で360度転回。到着から出発まで40分しかないため、迅速な作業が求められる。駐機する機体は、背景と絡めれば広角レンズでも狙える

<グランドハンドリング>
1日1往復にかける安心、安全、定時運航への情熱

紋別では流氷が訪れるこの時期、日中でも氷点下10度、寒いときには氷点下15度〜20度にもなるという。取材当日は氷点下2度だったが、それでも凍えるような寒さのなか、展望デッキからは黙々と駐機したエプロンで作業するスタッフたち見える。ところが、装備があまり暖かそうではない! オホーツク紋別空港でANAのグランドハンドリングを担当する渡辺達也さんの場合、アンダーウエアにツナギ、防寒具の3枚のみという。

「仕事をしていて厳しいのは、やはり冬ですね。仕事内容よりも寒さ。本当に切れるような痛みです。スタンバイのときは凍えそうですが、着込んでしまうと動きが鈍くなるし、作業していると暖かくなります。雪が多くて除雪作業をすると暑くなるほど。微妙です(笑い)。顔や首元を暖めれば、少は体感温度が変わるためネックウォーマーは愛用していますね。またこの季節は、雪氷対策用に滑り難い冬靴が欠かせません。車両にも上がったり、ツルツルの路面を歩かなければなりませんから、靴底の溝が深くなっています」

そもそも渡辺さんが担当している、グランドハンドリングとは空港地上支援業務のこと。旅客機の到着および出発にまつわる一切の作業を行っていて、機体の周りで忙しそうに荷物を運んだり、特殊車両に乗ってたりするスタッフがそう。すべての空港におり、ここでの担当は15名。1日の作業は6人体制で、オホーツク紋別空港に就航する1日1往復の便を担当する。つまり、離発着が1回ずつ。到着から出発までの40分が、グランドハンドリング担当の勝負なのだ。

「寒さよりももっと厳しいのが、時間制限。限られた時間で、いかに速く安全に、お客様のために動けるか。朝から厳しい戦いです」

この時期、まず行うのは空港車両の除雪、暖気、点検、そしてエプロンの除雪。飛行機が到着しても、ターミナルビルまで搭乗橋がないから除雪して、乗客が歩く導線の確保も欠かせない。飛行機の到着が近付くと、いよいよ本番。5分前にはスタンバイしてマーシャリングの体勢に入り、それが終われば荷物を降ろし、搭乗してきた客室乗務員と打ち合わせ。機内清掃の管理をし、雪が降っていれば、機体に付いた雪を溶かして防氷液を掛ける。そして、搭乗客の荷物を積み込み、送り出す。この一連の作業を、たった40分でこなさなければならないのだ。積雪量や乗客数が多ければそれだけ時間は掛かるが、それでもステイタイムは変わらない。

「我々の仕事は、1日1往復、大切に集中して、当たり前ですが安全運航を第一に考えながら定時運航を心掛けています」

そしてもうひとつ、定時運航にこだわる理由がある。

「北海道の中でも紋別は、位置的にも地理的にもローカル。平成元年にJR線が廃止になり、札幌や旭川行きの都市間バスがありますが、時間だけを考えれば東京が一番近い他県。人口2万3000人程度のこの町にとって、東京直行便は地域の生命線なんです。もしこれがなくなれば、紋別は加速度的に疲弊していくかもしれません。だから虎の子として、近隣の地域も含めて定期就航便はなんとか維持するために、冬期、厳しい環境の中でも定時運航に努めてお客様サービスをよくし、リピーターを増やして行きたいと思っているのです」

普段、当たり前だと思っていた定時運航。その影には、グランドハンドリング担当者の効率のよい作業と定期便維持への切々とした思いが詰まっていたのだ。


地元・紋別出身で、一度は東京に出たが地元が好きでUターン。グランドハンドリングの仕事を始めて15年のベテランだ。紋別の良さはギスギスしたところがなくて、何もないところかなと笑う


到着5分前になったらエプロン(駐機するためのエリア)に向かい、マーシャリング(航空機誘導)のスタンバイをする。機体の転回や後の作業にも関わるため、「パドル」と呼ばれるシャモジ状の道具を使って、指定された場所へ確実な機体を誘導する


ボーイング737はコンテナ仕様ではなくバラ積載なので、荷物の搭降載はひとつずつ丁寧に行う。冬場の作業でも、荷物を落とさないことを第一に考え、防寒性のない一般的なゴム付き軍手を使用。どうしても寒いときは二枚重ねで対応するという


1日の作業は6名体制。グランドハンドリングの仕事は、航空機誘導からチョーク(タイヤ止め)作業、整備士補助といった仕事から、除雪および作業用車両の点検・運転まで多岐にわたる。限られた時間内で作業を終えるのが至上命題だ


乗客の60〜70%が荷物を預けるそうだが、旅客数の違いによって荷物の量も変わる。乗客が少なくても満席でも駐機時間は変わらないため、満席時にはスタッフ間で話し合い、いかに安全に素早く大量の荷物を運ぶかを考えるという

乗客の誘導や、機内持ち込み手荷物を頭上の収納棚に入れる際の注意点を事前にお知らせするのも仕事のひとつ。スムーズな搭乗と着席を促すためで、こうした小さな積み重ねによって定時運航が守られているのだ

出発時には、グランドハンドリング、カウンタースタッフが総出でお見送り。「定時運航はお客さまとの約束ですから、作業がスムーズにいって、定刻に送りだすときは達成感があります」

<紋別市>
神秘的な氷の世界と海の恵みに出逢える、オホーツクの街

紋別市といえば、なんといっても空港名にも付けられているオホーツク海。そして流氷。海流に乗って流れ着いた氷が、海一面を埋め尽くす。神秘的で目を楽しませてくれるが、流氷がもたらすのはそれだけではない。流氷が運んで来たプランクトンが、この地の魚介類を育むため海産物が美味しく、舌も楽しませてくれるのだ。

「魚介はすべておいしいけれど、やっぱりホタテと毛ガニは食べてほしいですね。本当においしいです。特に3月末から5月にかけて捕れる毛ガニは、身もカニミソも詰まって絶品。紋別に来たら、ホタテなり、カニなり、その日に上がったものを召し上がっていただきたい」と、ANAの菊地美彦紋別空港所長。


流氷の期間中は禁漁で、3月末から12月までがシーズン。紋別港では毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニの「三大カニ」が水揚げされるが、特に毛ガニ、しかも禁漁が解けてからの1ヶ月が特においしいそう

ホタテの旬は3月から11月で、身が締まって甘く、刺身でも、ステーキでも、フライでも美味。旨みが凝縮された干し貝柱も人気で、お土産店での購入もできる

5月上旬〜10月下旬までは「紋別カレイ」ともいわれるブランド魚のカレイ釣りが楽しめる。氷削船「ガリンコ号Ⅱ」もこの期間は、カレイ釣り漁船に早変わり。釣り竿もエサも用意されているから、手ぶらでもOK


大きなドリルを船の先端に備える氷削船「ガリンコ号Ⅱ」。季節や天候によって運航状況は変わるが、1日7便が予定されている。乗船は予約制で、乗船の2ヶ月前から予約が可能


紋別のメインイベントは、なんといっても1月末〜3月末まで見られる流氷。ガリンコ号Ⅱに乗って海原に出かければ、そこは別世界。そして流氷とともにやって来る、海の妖精「クリオネ」も必見だ!


間近に見る流氷はもちろん、音を立てて流氷を砕きながら進む様は未知の体験。所要時間は1時間程度で、3月31日までの運航が予定されている